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【本】イチローvs松井秀喜 [野球]

 MLBのア・リーグ西地区で、マリナーズとエンゼルスで活躍を続ける両雄。これまで、それぞれの個人に関する本はたくさん出版されていたが、2人を比較分析した本は少ない。今回の『イチローvs松井秀喜』(古内義明 小学館新書)は2人のこれまでの生きざまを簡潔にまとめた本である。ポイントはお互いをどのように見ているかである。現在のMLBでの評価は、数々のMLBの記録を「安打」に関して残しているイチローの評価が高いが、米国全体でみると、シアトルという街の球団に属しているため、9年連続200安打達成の記録報道よりも、2カ月後に松井がWシリーズでMVPを獲得した報道記事の方が全米に報道されているのである。これはニューヨークの球団であるという事実が大きいのである。この野球でのパフォーマンス評価に対しても、これまでの2人の歩んできた道、野球への取り組み姿勢の違いが如実に出ていると思うのである。

 この本の著者は「はじめに」にの中で、
 (略)この本を書く大きな動機になった新聞記事がある。2009年秋、「NYタイムズ」が、松井の去就問題を取り上げたなかで、「松井はイチローと仲が良くないので、マリナーズで共にプレーすることを望まないだろう」という一文があった。

 もはやイチローと松井の禁断の関係は、アメリカ随一の権威を誇る新聞が伝えるほど公のものでありながら、日本ではタブー視されあまり報じられてこなかった。
 互いに互いを意識していたかと言えばそうでもない。松井はイチローについてこう語っている。
「イチローさんは走攻守のすべてでトップレベルにいる選手ですが、比較するのはメディアやファンで、僕自身が自分をイチローさんと比べることはしません」
「意識」という言葉があてはまるのはイチローの方だろう。オリックスからマリナーズ時代を通して、イチローの対極の存在として常に松井がいた。イチローが作り出す日本記録やメジャー記録は、松井の成績を軽く凌駕している。それでも、メディアとファンの注目は松井に集まった。

 だからこそ、イチローの松井に対する「無意識のなかの意識」は常に存在し、ある種の劣等感は消えることがなかった。
 「たとえ自分がノーヒットでもチームの勝利が最優先です。常に、ワールド・チャンピオンになった1番の原動力は松井と言われるような、プレーヤーになりたい」
 「チームが勝って、自分の結果も良かったというのが理想です。でも、自分の結果が全然なのにチームが勝ってそれでいい、というならそれではプロの選手として魅力がない」
 イチローは、プロの矜持をこう明らかにしている。
(中略)
「個人記録か、チームの優勝か」「メディアとの緊張関係か、協調か」「地方球団か、名門球団か」--これまでの2人のコントラストにメスを入れることで、2人の因縁、逆に言えばファンからの愛され方の違いをも浮き彫りにしたかった。
 イチローと松井は日本が世界に誇る最高の「Made in Japan」だ。両雄が究極のプロフェッショナルであることに異論はないだろう。しかしながら、時代のヒーローは、やはり1人でなければならない。ならば訊く、あなたが好きなのはイチローか、それとも松井か?
(略)

 以上の「はじめに」に応えて、ヒーローは1人でなければならない理屈はない。昔の巨人には、長島と王というスパースターの両雄が君臨した。この2人になぞらえると、「記録男」の「王」と「イチロー」、「記憶に残る打者」として「長島」と「松井」になるのではないかと思う。それぞれの現在の師弟関係を示していて興味深い。

 詳しく知りたい方は是非、本を手にとって購読を。

イチローvs松井秀喜〜相容れぬ2人の生き様〜 (小学館101新書)

イチローvs松井秀喜〜相容れぬ2人の生き様〜 (小学館101新書)

  • 作者: 古内 義明
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/04/01
  • メディア: 新書



6月7日現在のイチローと松井の成績。
試合打率打数得点安打本塁打打点盗塁三振四死球犠飛打
イチロー56.35822928821 151725212
松井 秀喜56.26319819529 33041252




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