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【本】検察 vs 小沢一郎 「政治と金」の30年戦争 産経新聞司法クラブ [書評]

いままさに、民主党代表選真っ只中にあり、両雄がしのぎを削っている。今回のこの本は、まさに争点のひとつ、「政治と金」にまつわる検察と小沢一郎との関り合いを記述してあるものである。「政治と金」だけに限定してあるので、小沢一郎の政治的業績の話などはどこにもでてこない。あくまで「政治とカネ」である。

 この本の冒頭は政治資金絡みで、初めて当事者となった「西松事件」に関する記述から始まり、小沢一郎の政治家としてルーツから、反面教師としての田中角栄のロッキード裁判を傍聴してから検察の捜査思考を知ることになる。そして当選2回生議員ながら、次のような発言にて検察庁に対して批判的な見方を示している。官僚は政治家からの批判を極端に嫌う種族であることは本能のようである。
<(ロッキード事件は)司法の自殺行為ですね。(中略)まず第一に、田中さんが受け取ったと言われる五億円というお金を見た人がいないんです。米国ロッキード社のコーチャン副社長やクラッター元東京支社長、日本側の丸紅の大久保利春専務らも含めて、お金を見た人がいない。それから最高裁判所の裁判官会議によってコーチャン氏に免責特権を与えて嘱託で尋問した。日本の司法には司法取引による刑事免責なんて仕組みはないんです。なのに、こんなばかなことを日本人は平気で認めている。これはおかしいです>『小沢一郎 政権奪取論』
これを読んだ検察官はカチンときただろうことは予想がつく。ロッキード事件は単なる贈収賄事件ではないことは明白であり、その真の意図を小沢一郎が認識しているかどうかは定かでなない。田中自身についても、同情的な見方をしている、ところに何かを感じ取っていた節はある。
<田中さんだけがやっていたんじゃない。民間人も政治家も役人も、みんなやっていたし、そういうことを日本では潤滑油のようなものとして認めていた。そんな風土があった。だから、社会が全部了解しているような話を、なぜ田中のおやじの問題だけ取り上げて、悪い悪いとスケープゴードにするんだと思った>(同)
この「田中」を「小沢」に置き換えると、30数年後自分自身に降りかかった状況と酷似している。

 小沢が47歳で自民党の幹事長に就任して迎えて総選挙で財界から300億をかき集め、安定過半数を獲得し、参院選での惨敗の流れを食い止めた。その結果「剛腕」小沢が誕生したのである。

 何故、小沢一郎が政治資金絡みで胡散臭いを次のように記述している。
<現行の政治資金規制法は、田中金脈が原因の「75年の改正」と小沢が手がけた「94年の改正」が骨格となっている。小沢が関係する政治団体は、この規制法に抵触する疑いを何度も指摘されてきた。
(中略)
07年には、陸山会が政党助成金を含んだ政治資金で、都内の一等地などに計13件、約10億円相当の土地やマンションなどの不動産を次々に購入し、登記簿上の名義はすべて小沢になっている問題が表面化している。(中略)資金管理団体が土地を買っている現職の国会議員では小沢だけだった。仮に小沢が死亡した場合は法制上、これらの不動産は小沢の親族が相続することになる可能性が指摘された。
 政治資金規正法は、政治資金の運用や国債など三項目に限定し、それ以外の運用を禁じていることから、陸山会はその後、「目的は資産運用ではない」と釈明した。
 不動産購入問題発覚を受け、規制法は同年六月に再び改正され、資金管理団体による新たな不動産取得は禁止されたのである。
 度重なる規制法の改正は、田中から小沢に連なる政治家人脈が「政治とカネ」の問題で原因つくり、その政治家自身が改正を手がけてきた。「ザル法」とされる規制法改正の歴史をひもとくと、常に中枢でかかわってきた小沢たちが法の「盲点」を駆使して集金システムを構築してきた姿が浮かぶ。(以下略)>

 検察は、小沢たちが法の「盲点」を駆使して集金システムを構築してきた、を苦々しく指をくわえてみてきたのである。そして「いつか尻尾を捕まえるぞ」という気持ちを検察に抱かせたことを想像する。
 これは、西松事件を発生当初は、検察の国策捜査であるという論調が幅をきかせたが、どうも小沢自身が播いた種が芽を出し、あのタイミングで検察が刈取りに乗り出したのである。
 
 この本の著者は産経新聞であるので公正中立とは思わないが、次の西松事件捜査の検察の動機は少し納得した。
<特捜部の捜査については近年「国策捜査」などと呼ばれて批判を受けるケースも少なくない。
 今回の事件でも、民主党国対委員長の山岡賢次ら党幹部が「国策捜査だ」と検察を露骨に非難し、小沢を擁護した。
 それまで合法とされていた行為について、検察が無理矢理逮捕し、「筋書きありき」で起訴するという批判である。「国策捜査」という言葉を世に広めた佐藤優は、国策捜査の定義を(1)官邸主導で時の権力者に有利になるような捜査(2)検察主導で時代の節目を作る、時代を転換させるための捜査-としている。
 03年7月30日に開かれた公判の被告人質問で佐藤は、約2時間にわたって思いの丈を語ったが、国策捜査については「特定の政治的ターゲットの中に何としても犯罪を見出し、作り出すことだ」と定義した。また、、「国策捜査は大きな必然性の中から生まれる。(今回の場合は)日本の政官(鈴木宗男と外務省)の関係を変えなければならないとして象徴的事件を作りだして断罪し、時代のけじめをつけるのが目的だった」と持論を展開してみせた。
 ただし、多くの検察関係者の言ううところの、「国策捜査」は違う。本格的な国策捜査の先駆けは、95年の旧2信組乱脈融資事件とされている。
 バブル崩壊により、政府が一行政機関として手がけた一連の捜査を検察関係者は国策捜査とよんでいる。ほかにも96年のコスモ信用組合事件や同年の住専事件、日債銀事件などがそれである。>

 ここの「国策捜査」の定義は佐藤優氏の方だろう。検察が呼んでいるのは、国が不良債権処理に税金を投入した施策の正統化を狙って、悪徳金融機関を見せしめに潰しました。これが国が考える「国策捜査」です、と言っているのであるが、ピンとこない。これは、ただ単に元々不正があることが分かっていたが、大蔵省が隠していたが、この際表に出してスケープゴードにしました、というだけのこと。どこが国策捜査なのか。自分達の政策の正当化を図るための、不正捜査が国策捜査ではないだろう。ただ単なる刑事事件で、隠蔽していた事実の方が国策犯罪ではないのか。

 そこで今回の捜査の見解は、
<佐藤自身は、今回の「小沢ルート」については、「国策捜査だと思っていない」と述べている。佐藤はその理由として、産経新聞の取材に「事前に世論を盛り上げて象徴的事件を作りだし、時代のけじめとするのが国策捜査だが、今回はそうなっていない」と述べている。 
 一方で、「西松建設の違法献金の実態を捜査しているうちに、『これでは(小沢代表に)次期政権を任せられない』と思ったのだろうが、世直しはあくまで政治がやること」と推論している。
 「小沢ルート」捜査の真相は、官邸主導などではなく、事件捜査に邁進する「ハンター」の本能を持つ特捜検事たちに、ときに“大人の判断”でストップをかける検察首脳が誰も「NO」と言わなかった結果である。>

 産経新聞らしい偶然の産物で、誰の意思でもないというような結論であったが、このような推論は通用しない。人のやることで、偶然はなく必ず必然の意図、意識のもとに起こされたのである。それが誰であるかはここでは推測しないが、あの大マスコミを総動員してのネガティブキャンペーンは異常である。検察”大本営本部”の垂れ流し情報を、神のご託宣のように報じる報道機関は、産経新聞も含めて報道機関の看板に偽りあり、である。

一方的に偏った報道はウソであることが世界の常識ではないか。この本はそのようなことを思い出させてくれた。


検察vs.小沢一郎―「政治と金」の30年戦争

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  • 作者: 産経新聞司法クラブ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/06
  • メディア: 単行本



小沢一郎 完全無罪 「特高検察」が犯した7つの大罪

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小沢一郎50の謎を解く (文春新書)

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小沢一郎は背広を着たゴロツキである。

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小沢一郎 嫌われる伝説

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日本改造計画

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  • 作者: 小沢 一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
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剛腕維新

剛腕維新

  • 作者: 小沢 一郎
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
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