SSブログ

「九州電力玄海原発は爆発する」 週刊現代の記事より [原発廃絶]

 定期検査を経ての原発の再稼働が各地で難航しているが、国からの再稼働要請に地元自治体の首長も応えようとしている原発が、この九州電力玄海原発である。

◇ 玄海原発再稼働、玄海町長4日に同意伝達へ
   佐賀新聞 2011年07月03日更新

 しかし、福島第一よりも、浜岡原発よりも危険な原発であると、井野博満東大名誉教授が、週刊現代の記事で告発している。いつもながら、記事の内容をどう見るかは、読者個人の判断であり、国の、電力会社の〝安全宣言〟がいかにいい加減であるかは、東京電力福島第一の状況を見れば、明らかであり、もし記事の内容通りのことが起これば、〝想定外〟の言いわけは通用しない状況が生まれる可能性が高い。記事内容の概略を掲載する。

*****************************************************************************************************************
 もっとも危険な原発--それは疑いなく、この玄海原発だ。もし事故が起きれば、その被害は福島第一の比ではない。予想される「大爆発」は、人々の命も日本の未来も、根こそぎ吹く飛ばしてしまう。

 チェルノブイリ以上の大爆発

 「原子炉は老朽化するにつれ、圧力容器が中性子線によって脆化=劣化していきます。すると、ある条件に陥った場合に、容器がバリン、と割れてしまう危険性があるのです。

 圧力容器の破壊は、原発にとって究極の大事故というべきものです。圧力容器が割れたら核反応の暴走を防ぐ手立てはほとんどなくなります。原子炉が、福島第一原発でも起きなかったような大爆発を起こすのです。その危険が、いま玄海原発(佐賀県・九州電力)に迫っています」

 そう指摘するのは、金属材料学の権威で、東京大学名誉教授の井野博満氏だ。

 東京電力福島第一原発のメルトダウン事故を受け、政府は浜岡原発(静岡県)の全面停止を決めた。理由は、M8超とされる東海地震が発生する可能性が高まっているからだという。

 しかし、果たして「危険な原発」は、浜岡だけなのか。井野氏は、日本で最も古い原子炉の一つ、玄海原発1号機の危険性を強く警告し続けている研究者だ。
                          ***
 一般にあまり知られていませんが、日本は〝原発老朽化の先進国〟です。

 アメリカは日本より10年早く、60年代に原発を稼働させましたが、大半はすでに廃炉になっていますし、ドイツも同様です。その頃に建設され、運転を開始した原発がいくつも使われているのは、日本だけです。

 こうした、政界に類を見ない老朽化原発の象徴的存在といえるのが、玄海原発1号機なのです。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
  玄海原発では、最も古い1号機と、97年運転開始の4号機が現在稼働中。2号機、3号機は定期検査中だ が、その再稼働を巡って地元は紛糾し、玄海町は稼働を承認するも、佐賀県は慎重な姿勢を崩していない など、議論が続く。
  また、3号機は、09年に日本初のプルサーマル発電を開始した原子炉としても知られる。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 
 75年に稼働した玄海原発1号機は、いまや日本一危険な原子炉といっても差し支えありません。なぜなら、地震や故障など、何らかの原因で通常の冷却機能が停止し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動して原子炉圧力容器が急冷されると、その際に容器そのものが破壊されてしまう危険性があるからです。

 玄海原発1号機のような加圧水型軽水炉(PWR)は通常、圧力容器内が150気圧、300度以上の高温・高圧で運転されています。もし、この150気圧の圧力容器が壊れ、爆発したらどうなるか。

 容器内の放射性物質はすべて噴出し、空高く舞い上がり、広大なエリアに降り注ぐことになります。福島第一どころか、チェルノブイリ以上の大惨事になるのは間違いありません。
(筆者注:福島第一原発は沸騰水型原子炉である)

 では、なぜそれほど玄海原発1号機が危険なのかを説明していきましょう。

 原発の老朽化をはかるうえで重要な指標に、圧力容器の「中性子照脆化」というものがあります。原子炉内で核分裂が起きると、炉内で核分裂が起きると、炉内に発生した中性子が飛んで、圧力容器の内壁にぶつかり、金属にダメージを与えることになります。年月がたつにつれて、これが圧力容器を脆(もろ)くしてしまう。それが中性子照射脆化と呼ばれる現象です。

 一般に原子炉というと、非常に頑丈で、何か特別な材料でできているように思われがちですが、実はまったくそんなことはありません。圧力容器は鉄にニッケルやモリブデンなどを多少加えた鋼(はがね)でつくられていて、配管にいたってはステンレス製で、これは家庭用の流し台の素材と同じです。

 原子炉というのはそういうごくありきたりの金属でできています。したがって、他の一般的な機械と同様、径年によってガタもくれば、老朽化もする。しかも、その老朽化において原発特有の原因があり、それが中性子照射というわけです。
 
 原子炉があっさり割れる

 では、その脆化=劣化とはどういうものなのでしょうか。簡単に言えば、中性子線によって金属の柔軟性・弾力性が失われて〝硬く〟なり壊れやすくなる、ということです。
(中略)

 通常、鋼の脆性遷移温度はマイナス20度くらいです。しかし、中性子を浴びることによってこの温度がだんだんと上昇していきます。

 この温度が高いほど、原子炉は危険になります。なぜなら、地震等で緊急炉心冷却装置が作動し、圧力容器を冷やさねばならなくなった場合、この「冷やす」という必要不可欠な操作自体が、危険を招くことになるからです。

 玄海原発1号機の場合、この温度が、なんと「98度」になっているからです。

 ガラスのコップに熱湯を注ぐと、割れてしまいますよね。これはコップの内側と外側の温度差によって生じる力にガラスが耐えられなくなるからです。

 原子炉の場合は、これと逆になります。高温の原子炉の中に、緊急冷却のために水を入れる。すると、それによって圧力容器が破壊されてしまう。「脆性遷移温度」が高いということは、その際、より早い段階で容器が壊れる危険性が出てくる、割れやすい、ということになります。

 ちなみに九州電力が公表している玄海原発1号機の脆性遷移温度は、76年が35度、80年が37度、93年が56度でした。ところが最新の09年の調査で、それが一気に98度へと跳ね上がりました。

 何故これほど急激に上昇したか原因は不明です。

(中略)

 
 安全・保安院は知らなかった

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
  もしも玄海原発1号機が爆発を起こした場合、周辺にどれほどの被害を及ぼすのか。元京都大学原子炉 実験所講師の小林圭二氏は、こう語る。
 「原子炉の脆性破壊は、いまだかつて世界が経験したことがない、巨大な事故になります。福島第一の事  故は深刻ですが、それでも放射性物質の9割は圧力容器内に残っていると思われます。

  しかし、脆性破壊で爆発が起きれば、圧力容器は空になり、ほぼすべての放射性物質が放出されてしま います。被害は玄海原発がある九州だけでなく、東は大阪にまで及ぶでしょう。大阪は現在の福島県の一 部のように、避難区域になって住めなくなります。しかも、事故の進展が早いので、退避することも難しい。

  さらに、被害は中国などの近隣のアジア諸国はもちろん、欧米にまで及ぶことになるでしょう」
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 呆れたことに、原子力安全・保安院は、玄海原発1号機の異様に高い脆性遷移温度のことを、昨年12月に私たち「原発老朽化問題研究会」が指摘するまで、把握していませんでした。

 九州電力はこの情報を保安院に伝えておらず、保安院も電力会社に問い合わせる義務がないので知らなかったと言うのです。福島第一原発の事故で、原子力の管理・監視態勢が全く機能しなかったことが問題になっていますが、ここでも同じことが起きている。

 安全性が顧みられないうちに、日本の原発の老朽化はどんどん進んでいます。

 脆性遷移温度が危険域にあるのは玄海1号機だけではありません。

 美浜1号機は81度、同2号機が78度、大飯(おおい)2号機が70度、高浜1号機が54度と、ワースト2位から5位まで、福井県にある関西電力の原子炉が占めています。また、6位の敦賀1号機(日本原子力発電・51度)も福井にあります。

 老朽化原発は一刻も早く、廃炉にする必要があります。玄海1号機のように、本来40年の使用を想定していたのを強引に60年に延長して使おうなどというのは、もってのほかです。
(以下略)
******************************************************************************************************************

 東京電力も福島第一原発が40年を経過して、さらに60年使おうと根回ししている最中に、あの大震災に巻き込まれたのである。

 九州電力は、『日本電気協会』が定めた基準(93度)を下回っており、安全性に問題があると考えておりません」と回答しているが、同じように安全性に問題がなかったはずの福島第一原発は、地震と津波の前に〝神話〟が脆くも崩れ去り、多重メルトダウンという惨状を呈し、その終息作業もその場対応の連続でかろうじて、最悪の事態を回避している状況が続いているのである。

 玄海原発で爆発が起きたら、放射線量が高すぎて人は近づけず、人海戦術では終息できないまま、時間だけが過ぎ去り、西からの偏西風に乗り、東日本一帯にも、福島第一原発がばらまいた以上の放射能をまき散らすだろう。こうなる事態にの前に、原発を止め、廃炉にするしかないだろう。事故が起きてからでは遅いのである。



 
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。