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〝闇に葬られた〟原子炉の大事故を解析した秘密報告書 [原発事故]

 情報の出典は、広瀬隆箸 ダイヤモンド社発行の
大地震におびえる日本列島
原子炉爆弾
2010年8月26日 第1刷発行

よりの抜粋です。

 この報告書を読むと、現在の政府、東電の対応のチグハグさや損害賠償金の負担スキームの取り決め、被害地域の絶望的な予測が書かれているのである。あまりにも衝撃的な内容の為、存在そのものを〝闇に葬った〟のである。ここには事故発生後にどのような動きをするのかが読み取れるのである。

 以下は「原子炉爆弾」よりの引用です。
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 闇に葬られた秘密報告書
 日本が商業用の原子力発電を始めることを決定した翌年、1960年4月に科学技術庁の委託を受けて、日本原子力産業会議が科学技術庁原子力局に提出した極秘文書があった。
報告書の標題には「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害に関する試算」とある。この当時、わが国最初の商業用原子炉として計画が進められていた茨城県の東海発電所で最悪の大事故が起こった場合に、どれほどの被害が発生し、日本政府がその被害を補償できるか、保険会社がそれを引き受けられるかどうかを、真剣に検討したものである。

 秘密報告書であるから、沖縄返還における外務省の「核密約」文書と同じように、私たち国民はまったくその内容を知らされずに今日まできたが、私の知る限り一度、この秘密報告書の存在を毎日新聞が報道した。この1974年の報道では、これを書いた日本原子力産業会議にその存在を確認しても、外務省と同じように「報告書はない」とシラを切ったという。
 
 しかし、後日、私はこの分厚い実物コピーを入手したので、読んでみると、彼らの考え方がわかった。日本政府は、大量の死者が出るという、あまりにもおそろしい被害が予測されたため、国家ぐるみで、その報告書を闇に葬ったのである。こうして戦時中に大日本帝国の軍部が国民に「勝利! 勝利!」と連呼して悲惨な特攻作戦に導いたと同じように、国が国民をあざむく作業が、戦後の原子力作業でスタートした。

筆者注.現在のキャッチコピーは、福島第一原発で何が起ころうが、土壌が、野菜が、水が、海産物が放射能にどれだけ汚染されようが、政府はひたすら
 「心配ない、当面健康に影響ない」と言い続けてきている。

(中略)
 その報告書に掲載された被害予測図には、地図の下に、「物的被害は、(気象条件によって)最高では農業制限地域が長さ1000km以上に及び、損害額は1兆円以上に達しうる。」と小さく書かれており、東海村から半径が同心円で示されていた。つまり図にやや濃く描いた矢印範囲は、農業できない地域になる。日本全土で農業できないのだから、日本人が日本列島に住めないと考えてよいだろう。全員が被害者になるのだから、この問題で論争したり、推進派と反対者を色分けしたり、自分がどこの都道府県に住んでいるかによって安全か危険かを判断する人間は、よほど知恵が足りないということになる。

 この事故の条件は、出力16.6万キロワットの東海発電所で大事故が発生し、わずか2%の放射能が放出された場合を想定して、日本全土が壊滅する、という結論であった。実際の原発事故では、わずか2%の放射能抄出は、小さすぎて考えられない数値である。

筆者注.福島第一原発の1号機は46万kW、2号機は78.4万kW、3号機は78.4万kW、4号機は78.4万kWの出力で、合計計281.2万kWの出力の原発事故。

 報告書を詳しく読むと、放射能被曝の知識から見て、間違いなく起こる白血病や骨肉腫、白内障のような重要な疾患を除外したり、被災者に対する補償は死亡者85万円、立ち退き農家に35万円と、ゴミのような金額を列挙して、国民が見れば誰でも怒り心頭に発するような内容だが、それでも大量の死者を予想し、半世紀前の金額で、損害額が1兆円を超えると見積もっていた。

(中略)

 大事故があれば発電所内の電源系統が断絶され、同じ敷地内に林立する原子炉が連鎖的に事故に巻き込まれると予測されるので、現在の原発大事故では、秘密報告書とは桁違いに大量の放射能が日本全土を覆って、どのように控えめに評価しても、被害額では楽に数100倍の数百兆を超える。気象条件によって被害範囲がどこまで広がるかは誰にも予測できないが、広大な地方が消えることだけが間違いない。その時、おそらく日本という狭い国家は「放射能汚染地帯」の烙印を押されて世界貿易から取り残され、経済的にも激甚損害を受けて廃墟になると考えるが、最も妥当な推測だろう。したがって、被害額は誰にも計算できない天文学的な数字になる。

 このような原子力災害の賠償責任は、当然のことながら、原子炉を運転する電力会社にある。しかし先の秘密報告書は、原子力災害に対して保険会社がその被害額を払えるかどうかを検討することが目的で書かれ、結局、それを支払えないことが明白となった。そのために電力会社は、日本国内の損害保険会社などがつくった「日本原子力保険プール」に加盟して、原発一基あたり1200億円までしか保険で賠償金をまかなう義務がないということになっている。つまり賠償責任には上限があって、この保険を越せる損害に対しては、政府が国民の税金で補償することになっている。

 国民の被害を国民が補償する? おかしな制度である。被害は楽に100兆円を超えると予想されるのに、そのうち1200億円しか、電力会社は責任を持たないでよい、1000分の999は被害者の国民が自分で勝手に払えと定めているのが、日本の法体系である。誰も支払えない巨額だがら、ごく自然な、道理にかなった取り決めである。ただ、責任者である電力会社が、その被害補償もしないでよいという条件で原子炉を運転していることを、国民が全く誰も知らない今、事実を知った読者が「電力会社は、無責任のまま運転してもよい」と納得するかどうかは別問題である。ご自分の胸に、尋ねられたい。
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筆者注.5月13日に損害賠償のスキームを閣議決定したが、さすがにこの場では、一見国民への負担はまずいとみて、これを隠し、全国の電力会社からの供出金と国債による資金により「損害賠償機構(仮称)」が損害賠償の全面に立つようにして、東電はその支出された賠償金を長期にわたって補填してゆく、とした。
しかし、賠償額がどこまで膨らむかは全く予測ができないため、その支払いのために国民負担を求めるのは時間の問題と思われる。

◇ 東日本大震災:東電賠償、枠組み決定1日延期 首相、民主内異論に配慮
  毎日新聞 2011年5月13日 東京朝刊
 
 ここで問題は、損害賠償もさることながら、放射能汚染の問題地域を1000km以下の地域を農業不適としている根拠は、放射能汚染による食物被害は甚大であること示しているが、具体的な記述を削除しているので不明な点にある。少なくとも、日本列島全体が、政府・保安院が言う、〝安全・健康に影響ない〟という状況ではないということである。今後、異常な放射能汚染地帯に住み、水を飲み、そこで収穫された野菜、獲れた魚を食べざるを得ないのである。そしてその影響は、各年代ともガン・白血病などの疾患確率が大幅に上がることになる。10年、15年後にまだ日本が存在する場合には、病院は30代、40代以下の患者であふれ、今のように後期高齢者が病院を占拠している状況ではなくなる可能性が大である。医療困窮難民が発生する予感がする。

 上記したことが大袈裟でないことは、「原子炉爆弾」を一読していただければ納得するはずである。そしていま、この本にも書かれていない状況が進みつつあるのである。事故を収束できず、いまだ放射能を放出しつづけていて、時間経過とともに累積の放射線量は確実に全国どこでも増えている。文科省が日々の放射線量を公表しているが、これも真実を伝えていないことが判明しつつあり、個々の数値を鵜のみにできないのである。
 しかし、マスコミはもう収束してしまったかのような記事で、放射能まみれの記事が少なくってきたことは憂うべきことである。放射能汚染は心配して心配すぎることはないのである。理由は、放射能、特に自然界に存在しない放射能に対する安全数値など存在しない、ということが現時点の定説であるからである。
 

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