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『坂の上の雲』とは [坂の上の雲]

 テレビドラマの一部が終了。話の筋は日露戦争前まで進んだ、このドラマの原作は、最初産経新聞紙上に連載され、書籍化された。現在は、文庫本8卷と単行本6卷組が販売されている。その単行本の場合には巻末に「あとがき」が記述されているのである。その中で、「坂の上の雲」の由来が書かれている。そこからの引用である。

・・この長い物語は、その日本史上類のない幸福な楽天家たちの物語である。やがてかれらは日露戦争というとほうもない大仕事に無我夢中でくびをつっこんでゆく。最終的には、このつまり百姓国家がもったこっていなほど楽天的な連中が、ヨーロッパにおけるもっともふるい大国の一つと対決し、どのようにふるまったかということを書こうとおもっている。楽天家たちは、そのような時代人としての体質で、前のみを見つめながら歩く。のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶(いちだ)の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。

 そしてその楽天家が生まれた背景を次のように説明している。

・・・いまからおもえばじつにこっけいなことに米と絹のほかに主要産業のないこの百姓国家の連中が、ヨーロッパ先進国とおなじ海軍をもとうとしたことである。陸軍も同様である。人口五千ほどの村が一流のプロ野球球団をもとうとするようなもので、財政のなりたつはずがない。
 が、そのようにしてともかくも近代国家をつくりあげようというのがもともと維新成立の大目的であったし、維新後の新国民たちの少年のような希望であった。少年どもは食うものも食わずに三十余年をすごしたが、はた目からみるこの悲惨さを、かれら少年たちはみずからの不幸としたかどうか。

・・・政府も小世帯であり、ここに登場する陸海軍もうそのように小さい。その町工場のように小さな国家のなかで、部分々々の義務と権能力をもたされたスタッフたちは世帯が小さいがために思うぞんぶんにはたらき、そのチームをつよくするというただひとつの目的にむかってすすみ、その目的をうたがうことすら知らなかった。この時代のあかるさは、こういう楽天主義(オプティミズム)からきているのであろう。


 なんともいい時代で、選後の高度経済成長期に似ているのかもしれない。最近この本を読み直してみると、以前は気がつかなかった印象に残る記述があるのである。それにしても、今読んでも面白いのは何故だろう。


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